コラムcolumn

2024.09.09相続

相続した土地を国に受け取ってもらう制度とは?相続土地国庫帰属制度を解説

こんにちは勝司法書士法人です。

 

相続した土地で「この土地は不要だな」という時や遠方の土地で管理が面倒であったり

相続しても使わないという土地を国庫(国)に引き取ってもらえる制度が2023年よりスタートしました。

今日はこの制度について説明をしたいと思います。

 

1.相続土地国庫帰属制度とは相続した土地を国に引き渡せる制度

 

お父さんやお母さんが亡くなり田舎にあった土地を相続したけどその土地は使う予定がない。

固定資産税の支払いにも困るしその土地は、もしかしたら売却すらできないかもしれない。

 

こんな時国に貰ってくださいと言える制度が2023年4月27日よりスタートしました。

 

相続土地国庫帰属制度とは相続もしくは遺贈により宅地や農地、山林などの土地を取得した人が

一定のお金を国庫に納めることを条件に国庫に土地の所有権を帰属させることができるという内容です。

 

1-1.国に引き渡すには法務局の審査が必要

 

相続した不要な土地は、法務局により国庫に帰属できる要件を満たしているかの審査を受けなくてはいけません。

相続した土地が不要だからといってもどのような土地でも引き取ってくれるわけではないのです。

 

申請できる土地の条件は決まっているので利用を検討する場合には確認しておく必要があります。

 

1-2.制度ができた背景

相続土地国庫帰属制度は、相続された土地の荒廃の防止、土地を手放したいというニーズの増加

そして所有者不明土地の発生予防を目的に作られました。

 

他の財産などがあることから相続放棄できずやむなく土地も取得したという場合

管理できずにその土地が荒廃してしまうということがあります。

また放置されていることでごみが不法投棄されていたりなんてことも。

 

このように遠方に住んでいることから管理できないということで手放したいという方は

一定数存在するのです。

 

所有者不明土地は、相続登記を行わない間に何度か相続が発生したことで

所有者不明となってしまっているという現状があります。

九州の面積にも匹敵する面積が所有者不明土地となっていることから

それをなんとかしたいという国の思いがあったのです。

 

2.相続土地の国庫帰属を申請できる人は相続人

 

相続土地国庫帰属法の中で、申請できる人の要件が定められています。

 

  • 相続人であること
  • 相続または遺贈(遺言による贈与)により、土地または土地の共有持分を取得したこと

 

これにより土地または土地の共有持分の遺贈を受けた人でも相続人でなければこの制度の申請が

できないのです。

ただ相続人が、相続または遺贈により土地の共有持分を取得した場合には、その相続人と共同であれば

相続人でないほかの共有者も土地の国庫帰属を申請することができます。

 

生前贈与の場合、相続や遺贈で取得したわけでないことから国庫帰属の申請は対象外となります。

 

3.国庫帰属が認められる土地の要件

国庫への帰属が認められる土地は、法令に定められている却下事由と不承認事由の

どれにも当てはまらないもの限られます。

 

3-1.国庫帰属の申請ができない土地

国庫帰属が認められず却下される土地には次の5つがあります。

  • 建物のある土地
  • 担保権、使用や収益を目的とする権利が設定されている土地
  • 特定有害物質により汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地など、所有権の存否、帰属、範囲について係争中の土地
  • 墓地、境内地及び現在使用されている道路、水道用地、用悪水路、ため池など

 

以上の土地については、国庫帰属の申請自体が認められません。

 

3-2.申請しても承認されない土地

国庫帰属の申請を行っても承認されない土地には以下のものがあります。

  • 通常での管理が難しい崖などがある土地

勾配が30度以上、高さ5メートル以上の崖がある土地のうち、通常の管理に当たり、過分の費用や労力を必要とする土地

  • 土地の管理や処分をする際に邪魔になる工作物や車両、樹木など有体物が地上に存在する土地
  • 取り除かなければ通常の管理や処分をすることができない有体物が地下に存在する土地
  • 公道に通じない土地、池や沼・河川・水路・海を通らなければ行動に至らない土地、崖があって行動と著しい高低差のある土地など、ほかの土地の通行が妨げられている土地
  • 所有権に基づく使用または収益が厳に妨害されている土地
  • 土砂崩れなど土地の状況に起因する災害が発生し、その災害により生命・身体・財産への被害が生じるおそれがあり、その被害の拡大・発生を防止するために、土地の現状に変更を加える措置(軽微なものを除く)が必要なもの
  • 動物が生息する土地であって、その動物により人の生命・身体や農作物・樹木に被害が生じるおそれがあるもの(その程度が軽微で、土地の通常の管理・処分を阻害しないと認められるものを除く)
  • 主に森林として利用されている土地のうち、市町村森林整備計画に適合していないことにより、追加的に造林・間伐・保育を実施する必要があると認められるもの
  • 国庫帰属後の法令に基づく処分により、国が通常の管理に要するもの以外の費用に係る金銭債務を負担することが確実な土地
  • 法令に基づく処分により、承認申請者が所有者として金銭債務を負担する土地であって、国庫帰属後に国が法令に基づきその金銭債務を承継するもの

以上の土地は、申請は出来ても審査にて不承認となります。

反対に却下事由に該当せず不承認事由にも該当しなければ

申請があれば国は帰属させなくてはいけないのです。

 

4.相続土地の国庫帰属の申請先や申請手続き

 

相続土地の国庫帰属の申請は、土地の所在を管轄する法務局または地方法務局になります。

 

相続土地の国庫帰属の申請手続きは、以下の流れになります。

 

  1. 承認申請
  2. 書面審査・実地調査
  3. 承認
  4. 負担金の納付
  5. 国庫帰属

 

5.相続土地の国庫帰属の費用や負担金

 

相続土地の国庫帰属制度では、申請したからといってもただで引き取ってくれるわけではありません。

申請に手数料が必要になりますし承認後も10年分相当の管理費用を負担金として納めなければいけません。

 

まず相続土地の国庫帰属を申請する際には、土地1筆当たり1万4000円の審査手数料が必要になります。

 

承認を受けた後の負担金については、下記の通りとなります。

 

5-1.相続土地国庫帰属制度の負担金

相続土地国庫帰属制度の負担金は、土地の種目により計算方法が違います。

 

〇宅地

宅地は原則20万円となっています。

但し土地が市街化区域や用途地域が指定されている地域内にある場合は、面積に応じて計算されます。

 

〇田、畑

田や畑も原則として20万円となります。

但し土地が市街化区域や用途地域が指定されている地域内にある場合

農用地区域、土地改良事業などの施工区域内にある農地については、面積に応じて計算されます。

 

〇森林

森林の場合、一律金額の設定はなく面積に応じて計算されます。

 

〇その他(雑種地、原野など)

その他の種目については、20万円となっています。

 

6.相続する土地を手放すためのそのほかの手続き

 

相続する土地を手放したい場合には、相続土地国庫帰属制度を利用する前に他の方法で検討してみましょう。

それぞれの手段ごとにメリット・デメリットがありますので相続する状況に応じて手段を検討するといいでしょう。

 

6-1.遺産分割協議にて他の相続人に相続してもらう

相続人の中に土地を相続したいという人がいれば、遺産分割協議でその人に相続してもらうといいでしょう。

相続したい人の意思を尊重できることから

相続をしたい人にとっても、したくない人にとってもどちらにも良い結果につながります。

 

国庫帰属制度のような負担金も発生しないことから希望者がいれば最善の方法だといえます。

 

ただし使い勝手の悪い土地や売却が難しい土地の場合、誰も相続したがらない可能性もあります。

 

6-2.第三者に売却する

第三者に売却するという手段もあります。

売却できれば、その土地の維持管理にかかる費用は発生しませんし売却代金も入ってきます。

 

国庫帰属する場合だと負担金が必要になりますが、その費用も必要ありません。

 

しかしその土地が使い勝手の悪いものであれば、買い手が見つからない可能性があります。

 

6-3.相続放棄する

相続放棄をすれば、負担金を支払わなくても手放すことが可能です。

デメリットとしては、遺産の中に預貯金などの現金などがあった場合それらの相続も出来なくなります。

 

わからないことがありましたらお気軽にご相談ください

今回は相続した土地で「これをもういらないんだけど」という時に国にもらってもらう制度である

相続土地国庫帰属制度について解説してきました。

 

他の手放す方法についても解説しましたので参考にしてみてください。

 

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