コラムcolumn
任意後見契約していなかったため高級老人ホームに入所できなかった
こんにちは、勝司法書士法人です。
元気な頃から老後について考えていたAさん。
夫婦2人、将来は自宅を売却し、高級老人ホームへ入居するように考えていました。
ところがAさんは病気を患い、判断能力が著しく衰えてしまいました。
そこで奥さんとお子さんは、計画していた年齢にはなっていなかったものの
高級老人ホームへ入居できるように、任意後見契約を締結し、Aさんの願いを
かなえよう考えました。
ところが公証人の面接で判断能力の衰えが認められ、任意後見契約の締結が
できませんでした。
その結果、高級老人ホームへの入所もできませんでした。
今回はこの事例について解説しますので、もし老後計画を考えている場合は
ぜひ参考にしてみてください。
判断能力が衰えると任意後見契約ができない
Aさんは、奥さんとお子さん1人の3人家族でした。
子どもの頃から住んでいた家と土地を親から相続したAさんは、築年数も経っていたため
30代で新築しました。
お子さんは大学卒業後、就職し、結婚後新居を構えていたので、Aさんが所有する
土地や建物は将来的にはお子さんも必要ありません。
そのため、Aさんは奥さんと相談し、将来は自宅を売却して高級老人ホームに夫婦で
入居するように計画していました。
ところがAさんは50歳後半に脳梗塞に倒れ、60歳を迎えるころには脳梗塞が引き金となって
認知症の症状がみられるようになりました。
奥さんは土地と建物の売却、退職金、これまでの貯蓄で十分老後の生活を賄える財産はある
と判断し、Aさんが計画していた65歳での高級老人ホームへの入所を前倒ししようと決めました。
ただ、認知症で意思表示ができなくなる前に急いで任意後見契約を締結しなくてはいけません。
ところが公証役場で任意後見契約を締結しようとしたところ、公証人の面接により任意後見契約を
締結をするための意思能力の欠如が認められ、任意後見契約の締結はできませんでした。
そのため家庭裁判所に申立てし、法定後見制度にて法定後見人が選任されました。
法定後見人は本人の意思は全く反映できない
法定後見制度の活用となったAさんですが、法定後見人は家庭裁判所が選任します。
最高裁判所事務総局家庭局が発行している成年後見関係事件の概況によると、令和5年度の法定後見人
選任のデータから、親族以外が選任されるケースが82%となっており、親族が法定後見人として選任
されるケースは18%しかありません。
Aさんの事例でも、弁護士が法定後見人として選任されました。
奥さんとお子さんは、法定後見人にAさんの脳梗塞発症前から計画していた話を相談したものの
高級老人ホームへの入居は実現できませんでした。
法定後見人によっては本人の財産を守り、いかに減少させないかに重点を置く人もいます。
本人の希望だったと伝えても本人の病気発症前の意思を証明する術がなかったため、財産を減少させない
守りの論理が優先する法定後見人だったのかもしれません。
そのためAさんと奥さんが揃って高級老人ホームに入居する計画は実現しませんでした。
また法定後見人を付けた場合、Aさん名義の土地や建物を売却する場合には家庭裁判所から
自宅を売却する許可を得なければいけなくなります。
もし後見人が売却すると言っても家庭裁判所の許可が下りなければ、自宅売却の取引は
無効とされるため、計画していた高級老人ホームでの余生はかなわないでしょう。
任意後見契約であればAさんの計画は可能
法定後見人は、法律に定められた権限により任務を遂行します。
そのため、仮に法定後見人になった弁護士がAさんの計画を以前より知っていたとしても
病気発症前に計画していたことがわかるものがなければ、高級老人ホームの夢はかなえ
られないかもしれません。
しかし、任意後見契約の場合、Aさんの計画は実現できるかもしれません。
「私が要介護状態になれば、自宅と土地を売却し、〇〇老人ホームに入居したい」
このような希望を任意後見契約で締結しておけば認知症を発症しても本人の意思は明確です。
万が一計画を知らなかったお子さんが将来の相続分の目減りを気にして、別の安い老人ホームに
したらと意見しても、任意後見人は公正証書での契約に沿って本人の思いを実現させられます。
このように、任意後見契約は「頭の保険」と言うように、判断能力があるうちの対策が認知症に
なったときに自分の意思を発揮させます。
法定後見人を選任した後は、本人の意思は反映されにくくなるため元気なうちの任意後見契約を
おすすめします。
勝司法書士法人は、任意後見制度のスペシャリスト揃いです。
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