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2024.05.15相続

【事例解説】相続登記義務化で未登記建物は相続登記の対象になるのか

【事例解説】相続登記義務化で未登記建物は相続登記の対象になるのかについて

こんにちは勝司法書士法人です。

 

相続登記は、登記簿に登記されている被相続人(亡くなった方)の

所有していた不動産の名義を変更することです。

でも、登記されていない建物の場合どうなるの?と疑問に思う方も

いるのではないでしょうか。

そこで今回は、相続登記の義務化により、未登記建物は対象になるのか?

という事例について解説します。

 

 

1.未登記建物とは

不動産登記法にて、1ヶ月以内に登記をすることが義務付けられています。

 

(建物の表題登記の申請)

第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

 

この表題登記がされていない建物が未登記建物です。

表題登記を行っていない建物でも住むことはできますが

登記されていないことで、不都合が起きる可能性があります。

 

登記とは

 

登記とは

土地や建物の所有権を明確にするために、所在地や面積、所有者の住所や氏名を公の帳簿である登記簿に記載すること

それらの情報を一般公開することで、権利関係などの状況が

誰にでもわかるようにされています。

 

登記記録は、表題部と権利部に分かれています。

・表題部は、土地や建物の所在や状態、面積などの物理的な状況が記載

・権利部は、所有権に関する登記内容が書かれた甲区と

所有権以外の権利に関する登記内容が書かれた乙区に権利内容が記載

 

未登記のパターン

それでは、どのような建物が未登記建物になるのか パターンを整理します。

 

・家全体が未登記
・増築部分が未登記
・未登記かつ以前あった建物が減失登記もされていない

 

現在では、住宅の購入や新築する場合には住宅ローンを組むのが一般的ですが

昔は、住宅ローンなどの融資を受けず、現金一括で支払うことが一般的でした。

 

融資を受けずに建てた建物は、登記を行うと手間もお金もかかることから、

祖父母や高齢の親からの相続した古い建物の場合、未登記建物の可能性もあります。

 

 

2.未登記建物の確認方法

建物が未登記かどうかの確認には、2つの方法があります。

 

固定資産税・都市計画税の課税明細書を確認する

確実とは言えませんが、簡易的な判断方法が、こちらの課税明細書の確認です。

 

土地や建物の所有者には、毎年5月頃に固定資産税・都市計画税の請求書が

市区町村の固定資産係より郵送されてきます。

 

その請求書には、課税明細書(納税通知書)が添付されています。

所有する土地や建物の詳細と、それぞれの固定資産税評価額などが記載されています。

その項目の中に、家屋番号という欄があり、そこには数字が記載されています。

 

この家屋番号が記載されていれば、一般的には登記済みである可能性が高いといえます。

ただし、市区町村で未登記建物に独自の管理番号を割り当てしている可能性もあるため

確実な判断方法とはいえません。

 

番号の記載がない場合は、登記されていない建物であることがほぼ確定的といえます。

また市町区村で未登記の確認が出来ている場合、この欄に「未登記」と記載される場合もあります。

 

登記簿謄本を請求する

確実な確認方法としては、法務局に登記簿謄本を請求することです。

 

もし登記が出来ていない場合、該当する建物の登記事項証明書(謄本)はありません。

そのため建物が未登記建物だと断定することができます。

 

3.未登記建物は相続登記申請の義務化対象にはならない

それでは、登記されていない建物を相続する場合、相続登記は必要になるのでしょうか?

結論を先に言えば、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象にはなりません

その理由は、令和6年4月1日施行日の改定不動産登記法にて新設された条文を読めば記されています。

 

(相続等による所有権の移転の登記の申請)

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

※第1項のみ抜粋

 

この条文冒頭にある「所有権の登記名義人」とは、同法第2条第11号に次のように記載されています。

・登記記録の権利部に、次条各号に掲げる権利について権利者として記録されている者をいう

 

権利部に権利者として記録されている者が所有権の登記名義人ということになります。

つまり登記されていない場合、登記名義人は存在しません。

したがって、未登記建物には相続登記申請の義務化に関する第76条の2は適用されないことから

登記対象にはならないのです。

 

4.未登記建物を登記しないのはNG!表題登記が必要

では、未登記建物をそのまま登記せずにしておいていいかといえば、それはNGです。

 

相続登記申請の義務化については対象外だったとしても、表記登記の申請が

不動産登記法第47条1項にて義務付けられているからです。

 

つまり相続による不動産権利者の相続登記ではなく登記されていない建物を新たに

相続により取得したことによる表題登記が必要になるのです。

 

(過料)

第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する

 

同法第164条においては、第47条第1項の義務を怠った場合に対し

罰金10万円以下の過料が課されるとされています。

 

これまでの不動産登記法でも第47条や第164条はありましたが

令和6年4月1日以降での相続登記の義務化されたことで

未登記建物に対しても罰金が科せられるかもしれません。

 

わからないことがありましたらお気軽にご相談ください

今回の法改正では、所有者不明の土地問題に大きくテコ入れが入りました。

その中で、未登記建物は相続登記の対象にはならないという事例を

法の解釈からお伝えしました

しかし亡くなった後に表題登記が必要になるなどトラブルのもとになる可能性はいなめません。

 

親の相続を受けた自分の死後にトラブルを残さないようにするためにも

元気なうちに対応を考えるようにしましょう。

親をはじめとする家族や自分の死後、周りの人たちにトラブルを残さないよう

元気なうちからひとつひとつ解決していきましょう。

 

法律で定められていてもよくわからないということはあると思います。

そういったときは一人で悩まずにお気軽にご相談ください

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そんな時は、一人で悩まずお気軽にご相談ください

 

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