コラムcolumn

2021.09.25遺言

遺言執行者の権限の範囲を解説

こんにちは司法書士の勝猛一(カツタケヒト)です。

相続に関する民法が改正され遺言執行者の権限が強化されました。

改正前は遺言執行者は「相続人の代理人」です。

改正後は「遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有する者」に変わりました。

今回は遺言執行者の権限の範囲を詳しく解説しています。

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遺言執行者の権限の範囲を解説

相続手続き

遺言執行者の相続手続きには次のようなものがあります。

・戸籍等の収集

戸籍を集め相続人を確定するため調査を行います。

これは家族も知らない相続人が存在する可能性もあるからです。

・相続人全員への就任通知・財産目録交付

遺言執行者はその任務を開始したときは遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。

最近は親族関係も希薄になっています。

この通知は遺言執行者が相続手続きを進めることを相続人全員に知ってもらうために行います。

また遺言者の財産目録の作成をします。

 

遺言で記載されている財産が残っているとも限りません。

相続発生後、遺言執行の範囲内の財産調査をし財産目録を作成、相続人へ交付します。

・法務局に対する登記申請手続き

遺言に特定の不動産の記載がある場合は遺言執行者が登記申請をします。

遺言書には不動産を特定できるよう

具体的に記載することが大切になります。

たとえば

「私の所有する不動産を長男太郎に相続させる」

ではなく次のように記載します。

「遺言者は遺言者の有する次の財産を、遺言者の長男太郎に相続させる」

(土地)
所在  東京都港区虎ノ門○丁目○○番○○
地目  宅地
地積   ○○㎡○○

(建物)
所在   東京都港区虎ノ門○丁目○○番地
家屋番号 ○○番○○
種類   居宅
構造   木造瓦葺平屋建
床面積  ○○㎡○○

注意点として遺言執行者による登記申請ができるのは令和元年7月1日以後に作成された遺言からになります。

・預貯金の解約手続き

遺言に特定の預貯金の記載がある場合

銀行口座の解約・払い戻しを遺言執行者が手続きをします。

・株式等の名義変更手続き

証券会社にある株式を遺言書通りに相続人へ移管をします。

遺言書に「○○会社の株式を売却し、売却金を相続人太郎に相続させる」とある場合は証券会社によって対応が違います。

一例としては一旦、遺言執行者が相続手続き用の口座を証券会社に作ります。

その相続手続き用の口座に株式が移管されたら遺言執行者が株式を売却します。

その後、売却代金を遺言書通りに相続人に分配します。

また所有株式の未受領配当金、単元未満株について遺言書に何らかの記載があればこの相続手続きも行います。

未受領配当金とは遺言者がまだ受け取っていない株の配当金です。

 

単元未満株とは最低売買単位である一単元に満たない株式のことをいいます。

これは保有株式の株主名簿管理人の多くが信託銀行なのでそこで手続きを行います。

子どもの認知

遺言で子どもの認知をする場合は必ず遺言執行者を定める必要があります。

遺言執行者は就任した日から10日以内に

次の書類を提出します。

・認知届書(母親の氏名と本籍を記載して遺言執行者が署名・押印したもの)

・本籍地以外で届出を行う場合は、父親または子どもの戸籍謄本

・遺言書の謄本

届出先は

・子の本籍地

・父の本籍地又は住所地や所在地

のいずれかです。

成人している子を認知するには、その子の承諾書が必要です。

胎児を認知する場合は、胎児の母親の承諾書が必要となります。

遺贈

遺贈とは一般的に相続権のない個人または法人・団体に対し財産を残したい場合、遺言で残すことをいいます。

遺言執行者の指定がある場合は遺贈は遺言執行者だけが行うことができます。(民法第1012条2項)

遺言執行者を決めるメリット」でも解説しています。

遺言書で相続人以外の第三者に遺贈をする場合は注意が必要です。

団体によっては不動産や有価証券の遺贈を受け付けないところもあります。

というのは遺贈される不動産に境界線等の問題がないとも限らずトラブルを抱えたくないという受取る側の理由からです。

また、有価証券は種類によってはすぐに売却ができない場合があり処分に時間がかかるからです。

遺言で寄付をするときのポイント!!」で詳しく解説しています。

相続人の廃除

相続人の廃除する場合は、必ず遺言執行者を指定する必要があります。

相続人の廃除とは相続人から日常的に暴力や暴言をうけたり相続人が借金を繰り返し遺言者が困窮した場合などに相続人の地位を奪うことをいいます。

相続人の廃除をするには遺言執行者が家庭裁判所に申立てを行います。

そのため遺言者は生前に相続人の廃除に至る事情を遺言執行者に詳しく伝えておく必要があります。

そのためにも、廃除したい相続人との経緯を詳細に記録に残すことが大切です。

必要書類は

・遺言者の死亡が記載された戸籍謄本(除籍)

・廃除を求める相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)

・遺言書写し又は自筆証書遺言の検認調書の写し

訴訟追行権

訴訟追行権とは訴訟の当事者となり

訴訟を追行できる権能をいいます。

遺言執行者が、訴訟の当事者となることがあるということです。

たとえば、遺言の効力を争う者は

遺言執行者を被告として訴えます。

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遺言執行者の権限の範囲のまとめ

相続手続きの主なものは

・戸籍等の収集

・相続人全員への就任通知

・財産目録交付

・不動産の登記申請手続き

・預貯金の解約手続き

・株式等の名義変更手続き

ただし、遺言書に記載がない預貯金、株式の相続手続きや特定されない不動産の登記申請はできません。

遺言書で子どもの認知をする場合は、必ず遺言執行者を定める必要があります。

遺言執行者の指定がある場合は遺贈は遺言執行者だけが行うことができます。

 

遺言書で相続人以外の第三者に遺贈をする場合は不動産や有価証券の遺贈を受け付けない団体もあるので注意が必要です。

相続人の廃除をする場合は必ず遺言執行者を指定する必要があります。

遺言者は遺言執行者に相続人の廃除に至る事情を詳しく説明し記録に残すことが大切です。

遺言執行者は訴訟の当事者となることがあります。

遺言執行者の職務や権限は広範囲です。

遺言執行者は相続人ではなく経験豊富な専門家に依頼することをお勧めします。

また遺言書の書き方によっては遺産の一部分について遺言執行者としての権限を認められないこともあります。

遺言書を作成するときは相続手続きに詳しい専門家に相談しましょう。

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